ダルエスサラーム便り


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Kusikia si kuona No.29

相澤俊昭


相澤 俊昭(あいざわ としあき)




『カタビ国立公園』




  今回はタンザニアの国立公園の中でも、ほとんど知られていないカタビ国立公園を紹介したい。タンザニアの国立公園の中でルアハ、セレンゲティに次ぐ3番目に広大な面積を有するが、知名度で北部サーキットの国立公園と保護区に劣っており、観光客が少なく、観光開発が遅れており、手つかずの大自然がまだまだたくさん残されている。サファリを楽しむには十分な魅力を備えている国立公園だ。


<サファリ中に遭遇したゾウの群れ>

 訪問客数が多い北部サーキットのセレンゲティ、ンゴロンゴロでは、ハイシーズンになるとライオン一頭をサファリカーが何十台も取り囲むという状況が起きている。実際、このような状況に出くわすと動物を見に来ているのか、それとも動物の周りを取り囲んでいるサファリカーや観光客の様子を見ているのか時々分からなくなることがある。素直に言うと、ゆっくり動物を見ることが出来ないということである。これはサファリを本当に楽しみたい人にはあまり嬉しくない状況だろう。その点、タンザニアの南部サーキットではそういうことがほとんどなく、サファリを本気で楽しみたい人向けの国立公園と保護区がたくさんある。カタビ国立公園も今回、私がお勧めするその中の国立公園の一つだ。しかし、タンザニアの中でも最も僻地にある国立公園なので、そのアクセスの悪さから気軽に訪れることが出来ない原因になっている。私が行った8月のハイシーズンの時も、観光客とすれ違ったのはほんの3,4組だけだった。今年がたまたまそうだったのかは分からないが、非常に少ない訪問客数だと思う。反対にテントや食料などのキャンプ道具一式を積んだオフロード車を自ら運転して、キャンピングサファリをしている欧米人が結構いたのが印象的だった。みんな、それぞれ自分のスタイルでサファリをしているようで、とても楽しそうだったのが印象的だった。


<カタビでもナイトサファリができる。夜、食事に出かけるカバ>


<ハイエナ。わたしたちの車に興味津々で近づいてきた>

 カタビ国立公園の歴史はドイツ植民地時代の1911年にビスマルク・ハンティングリザーブとして保護が始まったところからスタートしている。その後、イギリス植民地時代にルクワ・ゲームリザーブとなり、ニェレレ時代の1974年に国立公園に昇格している。その当時の面積は2,253平方キロと、現在の約半分ほどの広さである。その後、周辺のハンティングブロックなどを取り込み、現在の面積になっている。国立公園として正式にオープンしたのは1998年になってからである。


<ローンアンテロープ>

 現在のカタビ国立公園の面積は4,471平方キロほどで、日本に例えると山梨県とほぼ同じ広さの国立公園である。日本のひとつの県とほぼ同じ面積だから、その広大さが伝わるだろう。周辺にはルクワ、ルクワティ、ルアフィなど動物保護区と森林保護区が隣接しており、25,000平方キロという広大なエコシステムを形成している。カタビ国立公園はミオンボ林とサバンナの国立公園だ。ルアハ国立公園やセルー動物保護区と同じように南部アフリカの植物相に連なった景観をしており、北部のセレンゲティのように大平原が続いている風景とはまったく様子が違う。ここではライオン、ヒョウ、チータ、ゾウ、ゼブラ、バッファロー、エランドなどサバンナの動物を見ることが出来る。ただ、動物が身を隠せる林が多いので、探しづらく焦れったさを感じる時もあるが、ゾウやライオンなど目当ての動物に遭遇した時の感動がひときわ大きいことも確かだ。


<わたしの乗っている車に近づいてくるゾウ。近い、その距離、3mほど>

 カタビ国立公園が最もカタビらしくなるのは乾季が最も進んだ8月から10月にかけてだろう。この時期には公園内の湿地、川や湖がカラカラに干上がり、僅かに残された水場にたくさんの動物が水を求めて集まってくる。つまり、水場のあるところ周辺を回れば、たいてい何かしらの動物を見かける。なかでも有名なのがカバの大群で、Ikuuと呼ばれる水場に何百頭ものカバが集まって来る。その様子と言ったら圧巻の一言である。湿地の中にかろうじて残された水場に大量のカバがひしめき合っている。これだけの数のカバがいると、周辺に立ちこめる臭いも相当なものである。私が滞在した1週間程の間で、毎日のようにゾウの大きな群れが水場に現れたし、ローンアンテロープ、エランドなどの珍しい動物も見ることが出来た。また、カタビ国立公園にはリカオンもいるそうだ。絶滅危惧種で頭数がかなり少ないので、そう簡単には見られないが、運が良ければ見ることが出来るだろう。唯一、ライオンが見られなかったのが残念だった。


<チャダ湖周辺。今は完全に干上がって大地がカラカラに乾いている>


<イクーの水場のカバの群れ。乾季が深まるともっと集まってくるそうだ>


<警戒心の強いカバ。こちらの様子を伺っている>


<僅かに残された川の水場にたくさんのカバが集まっている>

 現在、カタビには5つのロッジとテントキャンプがある。だが、どこもそこそこの値段がするので、安く上げたい人には公園管理事務所のあるSitalikeにリーズナブルなゲストハウスがあるので、そこに泊まることをお勧めする。ただ、サファリの中心地となる、Ikuuやチャダ湖、そしてカツマ川周辺、Katisunga平原からは少し遠くなる。そこで是非、お勧めするのが公園内に設置されたキャンプサイトを利用することである。なかでもIkuuにあるキャンプサイトは設備が整っており、水(井戸水)もあるし、綺麗な水洗トイレも併設されている。また、そばにパトロール中のレンジャー達が寝泊まりしている管理事務所があるので、セキュリティー面も安心である。もっと、ワイルドにサファリをするのであれば他の場所にトイレも水場も何もないキャンプサイトもある。ただし、こういった場所でサファリ初心者がキャンプ生活をするのは難しいので、Sitalikの村でドライバー兼ガイドとコックを雇う必要があるだろう。


<水を飲むキリンを見ることができた>


<水場に来た親子のゾウ、まだ生まれて間もないそうだ>

 カタビ国立公園へのアクセスはダルエスサラームから陸路移動で行くと3日間も要する。なので、普通は定期便の小型機(セスナ機)で行くことになる。もしくは途中のムベヤまで飛行機で飛び、そこに車を待たせておいて、陸路で移動する方法もある。この方法であれば2日間でカタビまで着ける。また、時間に余裕のある人には鉄道で移動する方法もあるが、列車の遅れ、キャンセルなどもあり、あてにならないのでこちらはあまりお勧めできない。やはり、最も簡単なのは小型機で一気にカタビまで飛ぶルートだろう。どうせカタビまで行くのなら、ルアハ国立公園、セルー動物保護区なども一緒に日程に組み入れると面白い。いずれにしてもかなり玄人受けする国立公園だが、機会があれば、是非お勧めする。

 

(2016年10月15日)





*『Kusikia si kuona』とは日本語で百聞は一見にしかずという意味です。タンザニアで私が実際に見て、感じたことをこのページで紹介していきたいと思います。

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