タンザニア歳時記・No.10
断食月と子供たち
金山 麻美(かなやまあさみ)
今年もラマダン(断食月)の季節がやってきました。当地タンザニアでは、10月27日からラマダン入りしています。去年同様、暑い時期のラマダンです。ラマダン明けは、今月末、26、27日あたりとなるでしょう。
小学4年生(10歳)の娘は、当地の私立の小学校に通っています。朝、7時30分始まりで、ランチタイムなしで2時までという長丁場。ただ9時50分から10時20分までがブレイクタイムという長い休み時間で、この間にスナック類をとってもよいことになっています。家から持ってきたカラフルなランチボックスに詰めたお菓子や果物を友達とわいわい言いながらつまみます。日本の小学校ではあまり考えられないと思いますが、校内に売店もあり、文房具はもとより、コーラ、スナック菓子、ハンバーガーまで売っています。お小遣いを持っている子はここで買い食いすることもできるわけです。
ただラマダン中となると、様子はちょっと違います。娘の学校は、インド、パキスタン系タンザニア人の児童が多く、タンザニアの人口比よりも、ムスリムやヒンドゥーの比率が高くなっているようです。
ラマダンに入ったばかりの月曜日、娘はいつものようにブレイクタイム用のおやつを持っていったのですが、クラスメートの女の子13人中、10人が断食をしていました。娘も含め、断食していない3人はイスラム以外の宗教の子。いつも一緒に食べる仲良しのお友達も断食していたため、他の場所でそそくさと食べてから、お友達のところへ戻ったそうです。
「学校に行っている間だけでも、付き合って食べないことにすれば?」と最近のちょっと太り気味解消にもなりそうなので、勧めてみたのですが、しぶとく毎日持っていっています。でも、ずっと友達と一緒にいたために食べられずに持って行ったお菓子をそのまま持って帰ってくる日もちらほらあるし、その逆に、友達が我慢できずに食べたり飲んだりしてしまう日もあるそうです。でも、その翌日からはその友達はまた頑張って断食に入るようですが。
すべてのムスリムが日の出から日没まで一切の飲食を断つのがラマダンですが、子供、病人、高齢者、妊婦、旅行者などは断食をしなくてもいいことになっています。
娘のクラスメート達は去年、つまり小学校3年生あたりからラマダンの時に断食をし始めた子供が多いようです。でも、最初から全期間(ほぼ30日間)やり通すのは大変なので、2週間くらいから始めて、だんだんと慣らしていくケースもよくあるようです。
身近なムスリム達(インド・パキスタン系ではなくアフリカ系?の)に「何歳の時から断食を始めたの?」と尋ねてみました。
中には、「6歳から始めて、最初から全期間やり通した!」と答えた猛者もいましたが、「13歳くらいから始めて、15歳になって全部やり通せるようになった」とか、「14歳からかな」などと(娘の同級生に比べると)遅めの開始の人たちもいました。
大人でも辛い断食は子供にはさぞかし‥と思うのですが、ラマダン期間中、ちょっといい服を着て大人と一緒に夜の散歩を楽しんだり、近所の子供達と一緒に歌を歌いながら、隣近所を練り歩きながら訪問して、おねだりするなど、その時でしかできない楽しみがいろいろあるようです。
断食中の娘の友達も土曜日の夜の11時半、我が家に「チセ(娘の名前)いる?」なんてはしゃいだ声で電話をかけてくるのもラマダン中の楽しみのひとつなんでしょうね。大人と一緒に夜食をとっての夜更かしは、(日本での大晦日のことを考えてもらえればわかると思うけど。でもそれ以上かな?昼間の断食があるからね)子供にとって断食中の醍醐味でしょう。もちろん断食していないわが娘は8時半にはベッドに入って寝ていましたが。
(2003年11月17日)
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