タンザニアからの手紙 No.8金山 麻美(かなやまあさみ) ![]() タンザニアの西はじにある細長いタンガニーカ湖のほとりには、まだチンパンジーの桃源郷と呼べる国立公園が二つある。ゴンベとマハレだ。 マハレは1965年以来日本人の研究者が入り、調査を続けている。ゴンベはマハレに先駆ける1960年にイギリス人女性のジェーン・グドールが入り、調査を始めた。 ジェーンはただただ動物とアフリカが大好きな若い女性だった。ブッシュピッグという猪のような動物もへびもいるのにゴンベの森の中に一人で入り、歩き、チンパンジーたちとだんだんと距離を縮めていった。チンパンジーがアリ塚の穴に細長い草の茎を突っ込んでアリ釣りして食べるのを初めて見つけたのも彼女だ。それまで人間以外の動物が道具を使うとは考えられていなかった。 ![]() 汗をかいたらタンガニーカ湖で水浴びできる。対岸が見えない広い広い湖をバスタブがわりにつかえる。小魚が泳いでいるのが見えるきれいな水を思いっきり使える。 夜は満天の星に包まれる。いくつ流れ星をみたことだろう。 昼間は森林浴。ヤシ類、シダ類、葉を広げた大木、ツルのように巻きついている木、さまざまな緑、そして木々の間から降り注ぐまぶしい光。でも森の中にいるとひんやりと感じる。緑の匂いたっぷりの空気を吸い込むと心の中まで洗われるようだ。 ![]() ゴンベにいるチンパンジーは全部で90頭ほど。3つのグループに分かれている。それに比べてヒヒは3,000頭もいるという。「果物を食べる時、チンパンジーは、熟したものだけを選んで食べるけれど、ヒヒは熟してないものまで全部木からもぎ取ってしまうので困るんだ」とゴンベで調査を続ける研究者が言っていた。 慎み深いチンパンジーはその数を減らしている。私たちがもう少し慎み深い生き物となるためにはどうしたらいいのだろうかとゴンベの森の中で考えた。 (一部敬称略) (2005年10月5日) |