タンザニアからの手紙 No.9
マケレレ大学とアフリカハゲコウ
金山 麻美(かなやまあさみ)
隣国ウガンダへ行ってきました。
アフリカ最大の湖ビクトリア湖のほとりの町カンパラとジンジャへ行ったのですが、さすが「アフリカの真珠」といわれるだけのことはありました。東アフリカ一帯に雨が降らなくて困っている今でも緑がうっそうとしていて涼しく、人びとものんびりした雰囲気で、ゆったりとした気分になれるところでした。
首都カンパラには東アフリカで一番初めに創立された由緒あるマケレレ大学があります。1922年創立で、現在は国父とも呼ばれているタンザニア初代大統領ニエレレの出身校でもあります。
大学構内はとても広く、建物もイギリス風なんでしょうか。どっしりと歴史が感じられるものがおおく、さすがは東アフリカの名門校だと思わせてくれました。ただ、メインテナンスが行き届いていない部分もあり、荘厳な雰囲気の建築物の壁がはがれかけていたりするのが残念でしたが。
でも、大学構内に入ってまず目に飛び込んできたのは、実は歴史を感じる建物群ではなく、とてもたくさんのアフリカハゲコウでした。芝生のグラウンド、木の上、屋根の上にこれでもかっというくらいたくさんいます。3メートルくらいの高さの木の上に10羽以上もとまっていました。わたしたちに寄ってくることはありませんでしたが、目の前に広がる光景を見て思わずひるんでしまいました。
アフリカハゲコウはアフリカのサバンナなどで見かける大きな鳥で、コウノトリの種類だそうです。羽を広げると2メートルから3メートルにも及び、その名の通り頭は白くはげています。くちばしは長く、羽は黒く、2本の足は細く長く、「死神」のイメージがします。実際、サバンナで肉食獣が倒した動物の肉の残りに群がっていることがよくあります。
実は昨年末に行ったタンザニア側のビクトリア湖のほとりの大都市ムワンザの漁村でも水辺に大勢いるアフリカハゲコウを見ました。岸辺にバケツを持った人がいて、その人のそばにアフリカハゲコウが群がっているので、「あの人は何をしてるの?」と近くにいた人に訊いたら、餌をやっているとのこと。なぜかというとアフリカハゲコウは水辺のゴミをあさって食べて掃除してくれるから、魚の臓物などを餌にして、ここに居つくようにしているそうな。湖にいるアフリカハゲコウというのも奇妙な感じがしました。
さて、マケレレ大学のアフリカハゲコウに戻りましょう。大学の外でも彼らを見かけないことはありませんでしたが、構内ほど群がってはいませんでした。
わたしたちのマケレレ大学訪問は短い時間だったので、なぜあんなにアフリカハゲコウが多いのかを検証することができませんでしたが、考えられるのは、餌が豊富にあることと居心地がいいこと。
アフリカハゲコウは虫や蛙なども食べるそうですが、ここの場合、餌としてたくさんありそうなのはやはり残飯の類だろうなと思います。学生寮も教員宿舎も学食もゲストハウスもあることだし。学生数はなんと3万人だそうです。そしてマケレレ大学関係者にはたぶん温厚で優しい人が多いので、アフリカハゲコウを邪険にしたりしないのでしょう。高い木々の枝の間にあるアフリカハゲコウの巣も見つけました。雛の姿は見ることができませんでしたが、巣の中を覗き込んでいる親鳥の姿などを見ると、その姿や行動から嫌われがちな彼らではありますが、ちょっとほのぼのしていいもんだなと思ったりもします。
でもやはり、カラスの次に世界制覇を試みる鳥はアフリカハゲコウというのはちょっとぞっとしませんよね。幸か不幸か彼らは寒さには弱いそうなので、寒い冬のある地域には進出できないでしょう。
(2006年1月20日)
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