タンザニアからの手紙 No.13金山 麻美(かなやまあさみ) ![]() マウンテンゴリラのグループはシルバーバックという大きな雄に率いられている。 マウンテンゴリラの一家はだいたいが血縁関係なのでシルバーバックはいわば一家のお父さん的存在のようだ。雄のマウンテンゴリラは12歳を過ぎたころから背中の毛が一部分白っぽくなるのでそう呼ばれている。日の光を浴びて銀色に光る毛並みが美しい。(Hグループには2匹のシルバーバックがいた。第1位オスと第2位オス。マウンテンゴリラの場合は、2頭の間に親子か兄弟などの血縁関係があることが多いそうだ) ![]() 日本人の同行者の一人、Tさんは望遠のとてもいいカメラを持ってきていた。わたしは中途半端な性能のデジカメ持参。でも、他の人のシャッター音を聞きながら、ちょっとでもいい写真を撮らなきゃと少し焦った。シャッターチャンスを逃すな!何のために?このページのためなんだけどね。 ![]() 2歳ほどの子どもゴリラはお母さんゴリラからちょっと離れた枝の上でイチジクの実を食べていた。でも、母の近くからあまり離れようとしない。地上に降りた時はしっかりと母の背中におぶさっていた。それを見守るシルバーバック父さんの優しそうな瞳も忘れられない。シルバーバックは子どもたちとも遊んであげることもあるいい父さんなのだそうだ。 資料*によるとゴリラの子どものうち、約30パーセント強が6歳まで生きられないということだ。厳しい自然の中で、出会った彼らが強く生きていけることを願う。 もう一人の同行者Hさんは使い捨てカメラしか持って来てなかった。最初から写真は2の次でゴリラたちにちゃんと挨拶しよう、彼らをよく見ようというスタンスなのだ。どっちつかずの私。でも、どちらにしろ私の腕では素晴らしい写真など撮れないのだから…と、途中でデーターが満杯になったこともあり、それからはゴリラたちに二つの目をじっと注ぐことにした。でも、子どもゴリラがこっちを向いたりすると、ああ、写真に残したい!なんて思ってしまい、要らないデーターを探して消し、再び撮り始めたりしてしまうのだった。心に残せばいいのにね。 ![]() 「ぷうう」という豪快な音の後に木の上からボトボトボトと落ちてくるものあり。大きいほうも小さい方も勢いよく降らしてくる。遠慮なんて全くないので見ていて気持ちがいいくらいだ。さすがに私たちのところまでは飛んでこないしね。木の下でグループのメンバーを見守るようにどっしりと構えていた最年長シルバーバックの上におしっこが降り注いだ。その途端、大きな体をパッと横にずらすしぐさはなかなか見事だった。 ゴリラたちの平和で愉快な日常はいくら見ても飽きない。私はほんとにカメラを持ってこなければよかったなあと思った。ひざを抱えて森の中に溶け込みながらいつまでも一緒にいられたら…。そういう夢を砕くようにジョンが「あと残り時間は5分だよ」とか告げてきた。ゴリラたちと一緒にいられる時間は1時間と決まっているのだ。「でも、ベストショットを追加するために特別に3分間だけ延長してあげよう」なんて勿体つけるジョンであった。 時間となり、後ろ髪を引かれるようにしてゴリラたちに別れを告げる。 ![]() 荷物のところまで戻ると笑顔のポーターたちが「どうだった?」と言いながら出迎えてくれた。もちろん、とっても楽しかったよ。 来た道を車のところまで戻るとまだ10時30分。ポーターやジョンたちと記念撮影などをしてヘッドクォーターのある出発地点までもどってもまだ11時30分になったかならないかくらいだった。小屋の中に集まってノートに感想を書く。ジョンが参加者の名前入りの封筒を恭しく持ってきた。一人一人名前を呼ばれ、封筒を渡される。それは、ゴリラトレッキング終了証明書なのであった。まだ興奮冷めやらないが解散となる。ジョンやポーターたちに繰り返しお礼を言った。 やはりその日、3グループのうちで一番早く帰りついたのは、私たちHグループだった。歩いて片道10分以内のトレッキングというのはゴリラトレッキング史の中でも最短距離の一つに必ず入ることであろう。 ![]() ![]() 実は、当日の朝、お二人の調子がいまひとつのようだったので、ブリィーフィングの前にMグループから、楽そうなHグループに変われないかなと打診してみた。(ガイドたちもMよりHのほうが楽だろうと言っていた)人数もまだ余裕があるようだったし。が、遅れてやってきたかなり年配の参加者がHグループ所属だったので無理となった。しかし、Hグループに参加した人に聞くと片道2時間近く歩いたそうだ。(そのかなり年配の参加者も頑張って歩いたらしい)ゴリラたちの行動、予想し難し? その日、私は深い熱帯の森の中に吸い込まれるようなネイチャーウォークの旅に出た。 (つづく:8月1日アップ予定) *資料(冊子)…「MGAHINGA GORILLA NATIONAL PARK & BWINDI IMPENETABLE NATIONAL PARK」Uganda Wildlife Authority発行 (2006年7月1日) |