タンザニアからの手紙 No.23金山 麻美(かなやまあさみ) ![]() 断水は珍しいことではない。我が家はなぜかここのところ毎週土曜日の午後から日曜日の夜にかけて断水することが多い。理由はわかっていない。でも、その程度の断水なら不自由しないくらいの水は備蓄してある。裏庭には合計3,000リットル入るタンクが置いてある。そのほか、庭には大きなバケツに200リットル、各風呂場にもそれぞれ普通サイズのバケツに40リットルくらいの貯め水は常に備えてある。それでも断水も6日目になるとかなりピンチだ。裏庭のでかいタンクの水はほとんど枯渇し、庭の大きなバケツにもなくなったので、水曜日には、水の出ている知り合いの家からもらい水をしてきた。 調べてみると我が家の近所8軒だけが断水しているようだ。ここのご近所8軒で協力して水道管を引いたので、たまにこういうことがある。 昨年の水不足の時には道路際の水道管が掘り返されて、切断され、水が盗まれて、断水となるということがしょっちゅうあり、そのたびに、我が家と近所のタンザニア人夫人ママSとともにどこで切られているか探索し、つなぎ直すという作業をしなければならなかった。水不足は深刻な問題とはいえ、盗み水はやはり犯罪なのだ。 ![]() 頼りになる我が家の庭師Hが探索に行ってくれた。すぐそこの曲がり角までは水道管に水がきているという。その日の晩御飯は皿数が少なくてすむカレーライスにして、トイレもなるべく流さないように…。 翌朝、ママSにもう一度相談に行くと、「断水のとき、いつも動くのはうちとあんたのところだけで、あとは人も金も出さないので、今回は動きたくない」と言う。たしかに今までの断水修復作業はママSと彼女の家の若い衆と我が家の庭師Hが中心になってやってくれ、水道局へ文句をいいに行くときはわたしとママSの二人で行ったし、コネクターなどの部品の代金も2軒で折半してやってきた。他の家に声をかけても、困っているはずなのに、なかなか動かないのだ。 でも、このままほおっておいてもきっと水は出ないので、他の家にも声をかけながら、水道管を調べてみることに。ちょうど祝日で夫も休みだったので、動員して、近所の家の声かけをしてもらった。ママSと3人で手分けして呼びかけると、他の3軒も若い衆を出してきた。まずまずの成果。 ![]() 「水道局にはレポートを出したのかね?水道局員ではない人がなんでやっているのかね?」としつこい。ママSが「レポートを出したって、水道局は『こちらでは水を切っていません』というだけで、何もしてくれないじゃないか。こちとら、黙っていたら干上がってしまうんで、自分たちで盗まれた水を戻そうとしているだけだ。何が悪いのだ!」と威勢良く言い返す。わたしたちも「そうだ、そうだ!」と加勢した。多勢に無勢で旗色の悪くなった水道局員は、「ともかく、確かめてみよう…」と、水盗人が接続した水道管を見に行った。 ほんとうにここの水道局は、毎月のように数字の合わない(ほとんどの場合過請求の)請求書を送りつけて来るくせに、こちらの支払いがちょっとでも遅れると、水を切るとおどかし、実際に切ることもある。水道管が通っていても、ほとんど水の出ていない地域だってあるのだ。自分たちのことは自分たちで守らねば…という気分になってくる。 ![]() 水道局の職員はいつのまにかいなくなった。盗まれていた場所を修復し、断水していたときに水道管に入り込んだ空気を抜くと、うれしや、我が家の庭にも水が出はじめた!これでトイレも流せる!洗濯もできる!我が家より奥にあるママSの家にも水が出はじめ、 庭師Hたちとともにお互いを「Good Job!」と褒め称えあった。長い一日が終わろうとしていた。 (2007年5月15日) |