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タンザニアからの手紙 No.28

大雨季サファリ その1



金山 麻美(かなやまあさみ)



  緑溢れる草原の孤独なヌー  なだらかな斜面から続く小高い丘は、一面、みずみずしい緑におおわれていた。そこを通り過ぎると、若々しい緑のグラデュエーションが織りなす絨毯をかぶせたような草原があらわれてくる。白や黄色の背のひくい花がたくさん咲き誇っている。太陽を浴びてきらきら輝いている。
 ンゴロンゴロ自然保護区からセレンゲティ国立公園へ向かう道すがら、車から降りて、大の字になって寝転んでみたいと真剣に思った。でも、ヌーの群れに蹴飛ばされたり、ライオンにかじられたりすると、ちと困る。

 3月から5月にかけてはタンザニアの大雨季だ。スコールのような激しい雨が降ることが多い。雷を伴うこともある。そしてこの時期は観光のローシーズンとなる。この時期だけ閉めてしまうホテルやロッジもある。セレンゲティなどのロッジも4月1日からぐっと料金が安くなる。

インパラの子ども  では、この時期に野生動物を見に行くのはどうなんだろうか。たしかに草丈は高く、動物を見つけにくいということはあるだろう。道がぬかるんだり、雨の状況によっては通れない道が出てくることもあるだろう。でも大雨季といっても日本の梅雨とは違って一日中雨が降っているわけではない。激しい雨が通り過ぎた後、からっと晴れることも多い。それになんといっても雨季は命を芽吹かせる季節なのだ。

 今回の4月1日から7日にかけてのわたしたちのサファリに関して言えば、大成功だったといえるだろう。雨に見舞われたのは、ンゴロンゴロに降りる前の早朝だけで、あとはほとんどずっと良い天気だった。太陽の降りしきるなか、青々とした草原に散らばっている餌がたくさんあって幸福そうな動物たちを間近に眺め、いくら自分たちの日ごろの行いがいいとはいえ、いいところばかり取っているようでちょっと申し訳ないなあ、と思ったりもした。
 わたしたちは確かに運が良かったのかもしれない。でも、それを差し引いたとしてもこれから述べる観点から大雨季サファリはお勧めだと思う。

しまうまの子ども 1) 命の芽吹き

 この時期は畑も森も山も草原もみずみずしい緑の光を放っている。心が洗われるようだ。一年中こういう光景が続くならどんなに幸せだろうと思った。その幸福の大地には植物だけでなく、動物たちの新しい命も芽吹くのである。
 今回出会った動物たちの多くが子連れだった。

 お母さんが動いてもおっぱいに吸い付いて離れない子どものヌー。しまうまの子どもはたてがみがうす茶色だ。お母さんにじゃれつく子ライオン。走るお母さんのあとを懸命についていくインパラの子ども。チーターの小さな子どもは、毛がまだホワホワしていてぬいぐるみのタヌキのようだった。クロサイのお母さんは我が子を狙うジャッカルを追い払った。

チーターの母子  こうした命の物語を眺めているだけで、こちらの心もあたたかくなる。春の終わり、初夏の日差しのように少しまぶしくてうらやましくなる光景だ。こんなふうにわたしも優しくたくましい母でありたいものだと思うと同時に生きるってすごいなって改めて思う。

 厳しい自然のなかで、生まれてきた動物の子どもたちが大人になれる確率はそれほど高くはないのだろうけれど。でも、ともかく今を生きるのだ。

次回に続く

                (2008年4月15日)


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