毎朝通勤ラッシュの大通りには、あちらこちらからクラクションが鳴り響く。特に交差点では、車体の四方八方からわずか数センチの隙間を残すのみで車がびっしり連なっている。一歩も前に進まないことに耐えられなくなり歩道をすいすいと走っていく車、反対車線を走って少し先回りする車、通りは人々のわれ先にといったせかせかとした空気であふれている。
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大通りをぬけて舗装のされていない細い道に入ると、雨季のせいでできた池のような水溜り、度重なる雨でぬかるんでは乾上ってできあがった起伏、大木やコンクリート、ごく稀に放置されたタイヤが道の真ん中に横たわっていることもある。また、道路にはスピードを落とさせる為に意図的に盛り上がった部分が設けられている箇所もある。そのような‘障害物’を乗り越えるためにも、人々はセダンタイプよりも車高のある4WD車を好む。
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ひとたび車が信号で停止すると、マチンガと呼ばれる道路で物を売る人々が一斉に車に近づき、窓をのぞきこんでいる。新聞、カシューナッツ、オレンジ、ミニカーやりかちゃん人形のような子どものおもちゃ、タオルやハンガーなどの日用品まで、ありとあらゆるものが数秒、数分の間に売られている。路上ではマチンガとともに物乞いをする人々にも遭遇する。金銭や食べ物を乞うために窓ガラスをノック、車の扉を開けようとする姿を目撃する。
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近年タンザニアでは、自家用車が急速に普及している。多くは、日本製の中古車である。車の相場は、乗用車で300万タンザニアシリング(約27万円)から500万タンザニアシリング(約44万円)、4WD車で800万タンザニアシリング(約72万円)から1200万タンザニアシリング(約101万円)といったところである。路上では整備不良で止まっている車、ブレーキランプや方向指示ランプを切らしている車をよく目にする。車を手にし、それを維持していくことの経済的負担の大きさがうかがえる。車を持っているか否かということは、その人の経済的水準を表すものさしとなっている。
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我先にと先を急ぐ人々や悪路にも耐えられる大きな車を好む人々、一方で車に群がるマチンガや物乞いをする人、富裕層と貧富層の経済格差が拡大しつつあるタンザニア社会の縮図を路上で目の当たりにしている気がする。
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(2006年6月)
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