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MAWAZO KILA SIKU

為川 千秋(ためかわ ちあき)為川千秋

第5回 女性のファッション


     ダルエスサラームの街中を歩いていると、足踏みミシンで服を仕立てているおじさんをよく見かける。その後ろにある店をのぞいてみると、日本のクリーニング屋のようにできあがった服がびっしりとつるしてある。このような服の仕立屋さんが街のあちらこちらにある。カンガやキテンゲ、バティックの布を買い、自分の好きなデザインの服に仕立ててもらう、これがタンザニアの女性のファッション、オシャレの一つになっている。

 注文の仕方は布を持って行き、自分の好きなデザインを絵に描いてみるのがとても簡単である。あるいはスカートならnguva(人魚=裾が広がることで、尾びれのように見える)、mapande sita(6片=縦に布を6つ縫い合わせることによって、ラインがきれいに見える)、ブラウスなら袖のデザインがsambusa(サモサ=肩がサモサのように三角形にもり上がる)など、共通に理解されているオーダーの仕方がある。街を歩いていると、確かにこれらのデザインの服を着ている女性が多い。特にsambusa型に肩がもりあがっているデザインが人気のようである。スカートは、くるぶしが隠れるか隠れないかの長めのものが一般的である。他のオーダー方法として、壁にサンプルの写真が貼ってある店もあるし、大量に吊り下げてある、他の人のできあがった服を参考にしてもよい。もしくは、実際に着ている人を指差して希望を伝えることもできる。



 デザインが決まると、服の上からその場で順に、肩幅、腕まわり、胸囲、アンダーバスト、ウエスト、ヒップ、太もも、上半身と足の長さを測られ、ブラウスやスカート、袖の丈を決める。おじさんが紙切れにメモを取り、名前を書いてオーダーが完了である。ミシンだけどこかから持ってきて、道端で仕立てをしている人の場合、採寸もその場ですることになるため、人通りの多い通りでは、少し小恥ずかしくなることもある。あとは、値段の交渉をし、いつできあがるかを教えてもらう。ブラウスをオーダーする際は、ファスナーをつけてほしいと頼まないとつけてもらえず、特にカンガやキテンゲで仕立ててもらうときは、あまり生地がのびないので、ファスナーをつけないと脱ぎ着ができなくなってしまうことがある。



 値段は、店によって大きく差があるが、ブラウスとスカートのセットで一般的に6000シリング~(約600円)、高い店で15000シリング(約1500円)ほどである。これに布代がカンガ3000シリング(約300円)、キテンゲで4000シリング(約400円)であるから、タンザニアの女性にとっては、サロンで髪を編むのと同様にたまにお金をかけてするオシャレの一つである。



 できあがるまでの期間は、ブラウス、スカートやワンピースだけであれば、早いところで1日から数日、ブラウスとスカート上下の場合、1週間から10日かかる。ただ、店によっては、後回しや忘れられたりし、3ヶ月も4ヶ月もかかることもあるので、催促をしなければならないこともある。



 いくつかの段階を踏んでやっとでき上がった服は、自分だけのたった一つのものとなる。さらにサイズがぴったりで予想以上に腕のよい仕立屋にあたった場合は、とてもラッキーである。また、口コミで広がった人気のある仕立屋は、心配しなくても確実にうまく仕上がる。



 ダルエスサラームで見ていると、子どもを連れた母親たちの多くは家事の最中は全身カンガやキテンゲの布をまとっている。オフィスで働く女性は、スーツの人も最近はよく見かけるようになったが、キテンゲやインド製の布で仕立てた服を着ている人を非常によく 見かける。仕立てた服は、どちらかというと外出着であるようだ。

 それでも最近の女性、特に若者は、ジーンズやミニスカートにTシャツ、キャミソールなど欧米人のようなラフな格好、あるいは仕立てる服でさえも、スカートは長いがスリットが大きく入っているもの、ノースリブのブラウスなど、肌の露出や体のラインを強調した格好をする女性が増えてきた。そこで、男性に好みをたずねてみると、カンガやキテンゲを全身にまとう、あるいは長袖、ロングスカート(膝下より長いもの)に仕立てた服を着る女性の支持が圧倒的に多かった。理由は、体のラインを出したり、肌を見せたりする格好は、無礼という考えがあるからだ。確かに地方の村へ行くと確かにTシャツにジーパン姿のする女性は若者でもほとんどみかけない。よって、村から出てきた男性は保守的な考え方であるようだが、逆に若い女性はダルエスサラームのような都市で伝統的なしきたりから解放され、このような流行を作り出している気がする。また、そのような格好は娼婦がするものという見方から、冷ややかな視線を送る男性も少なくない。

 まだまだ男性側からは、女性の好みの傾向やオシャレの感覚は理解し難いようだが、それでも最近の女性のファッションは、実に多様化している。

                      (2007年1月15日)


  *MAWAZO KILA SIKU(日々感じること)では、為川千秋がタンザニア生活の中で不思議に感じたこと、疑問に思ったことなどを綴っていきます。


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