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MAWAZO KILA SIKU

為川 千秋(ためかわ ちあき)為川千秋

第6回 タンザニアの食事


   
 タンザニアの家庭を訪問すると、ママたちが家の庭の一角で薪に火を起こして料理をしているのを目にする。多くの家は、親戚やきょうだいの一家が、同じ家あるいは近所で暮らしている場合が多いことから、皆の分を一緒に大きめの鍋で料理をし、炊きだしのような光景である。





ピラウ作り 
 チャパティーや揚げドーナツのマアンダジ、米の粉を練ってカップケーキ型でくりぬいて揚げるキトウンブアが代表的である。
昼食と夕食は、ワリ(ご飯)かウガリ(トウモロコシの粉で練ったもの)、チップス(フライドポテト)にチキンか魚かマハラゲ(豆を塩をふって煮つめたもの)とムチュジ(トマトベースで野菜が入ったスープ。ビーフが入っていることもある)という形が一般的である。ただ、チップスとチキンは、レストランではポピュラーなメニューではあるが、一般の家庭ではあまり料理されないように思う。



ムチュージ、マハラゲ
 ウガリの材料のトウモロコシの粉の方がお米よりも安価であるため、ワリよりもウガリの方がよく食卓にの ぼるようである。肉と魚は高価であるため、比較的安いマハラゲ、ンボガ(野菜)がよく料理される。
 パーティーなど特別な日には肉や魚がふるまわれる。加えて、ピラウ(ビーフとジャガイモの入った炊き込 みごはん)やカチュンバリ(タマネギ、ピーマン、キャベツ、トマトなどの野菜をライムと塩と唐辛子であ えたもの)、サモサ(三角形の春巻き)、フルーツが出される。

カチュンバリ
 ムチュジやごはんもの(ワリ、ピラウ)は、材料を入れて鍋にかけ放っておけばよいが、ウガリはそうはいかず、硬さを見ながらウガリの粉と水を交互に入れ、ひたすら練り続けなければいけない。柄の長いしゃもじのようなもので、小さめの鍋で約20分は練り続けているようである。硬くなると重量が重くなるので、混ぜるのに力を要するため、なかなか体力のいる料理である。



ウガリ作り
 通常、つけ合わせとして、緑色の野菜の炒め物(おひたしのようなもの)がつく。ムチチャ(ほうれん草に似たもの)、キサンブ(キャッサバの葉)が出されることがよくある。塩と油が基本で、人によってはタマネギなど他の野菜やココナツを入れたりする。調理されたものを見るだけではどの種類の野菜か判断がつかないことが多いので、たずねてみるとムボガヤマジャニ(緑色の葉っぱ)という答えが返ってくることがある。どうやら庭にはえている緑色の葉っぱを適当にちぎって調理する場合もあるそうである。すなわち緑色であればどんな種類でも使うようである。



葉っぱの料理
 時間をかけてできあがった料理は、それぞれお皿に移され食卓にのぼる。これを各自で好きなだけとって盛り付けをする。私がいつも驚かされるのは皿の中で味が混ざらないようにすることはなく、あえて全てを混ぜて盛り付けていることである。フルーツでさえも混ぜている人もいる。せっかく長い時間をかけて作ったのに味が混ざってしまってはなんだかもったいない気もする。あまり一品一品を味わうということはないように見える。



 食事の前後には、どこの家庭でも必ずポットに入れられた水と洗面器が出てきて、一人ずつ手を洗う。多くの人は手で食べるからである。
食事の間は、家族一同が集まるわけではあるが、特に積極的に団欒する場というわけでもなく、淡々と食事を済ませ、終わった人から席を外していくという印象がある。食事が終わり、寝るまでの間、女性が食事の後片付けをし、男性や子どもが居間に集まって会話を交わし、くつろいでいる雰囲気が見受けられる。



 タンザニアの一般家庭の料理は、電子レンジを使うわけでもなく手間暇をかけて作られているせいか、どれもとてもおいしい。調理の際に計量をすることは一切ないので、代々受け継がれている味、長年の勘で料理がされているのだと思う。
何よりも、女性たちが空の下でぺちゃぺちゃとおしゃべりをしながら料理をする光景は、見ているこちらも思わず輪の中に入りたくなるほど、とても楽しそうな光景である。



(2007年3月15日)


  *MAWAZO KILA SIKU(日々感じること)では、為川千秋がタンザニア生活の中で不思議に感じたこと、疑問に思ったことなどを綴っていきます。


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