今年の7月に初めて訪れてから、すっかり気に入って、ザンジバルに行く度に
足を運ぶようになった場所がある。それが、ストーンタウンから東海岸への道の
途中にあるKidimni(キディムニ)というところにあるザンジバルドアのワーク
ショップが立ち並ぶ場所だ。そこには、静かな畑の広がるまっすぐに伸びる道路
を挟んで10軒以上のワークショップが並んでいる。
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それぞれの小屋には、まだ何も彫られていない木板から、完成品のドアまで、様々な段階のドアがところ狭し
と置かれ、コンコンコンコンとドア職人たちが板を彫る音を響かせながらもくも
くと作業をしている。刀を上からコンコンとたたいて、リズミカルに木板に模様
を描いていく作業は見ていて飽きない。
ドアの注文は、ザンジバル、タンザニア内からはもちろん、中東やヨーロッパか
らも来ているのだそうだ。
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道路の両脇には、大人の職人たちのやるのを見よう見まねで子どもたちが作っ
たのだろう、荒めの模様の木箱や小さなドアの模型を子どもたちが売っている。
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もともとアラビア半島から持ち込まれたイスラム様式のドアが、ザンジバル独
特のスワヒリ文化や西インドの様式も取り入れつつ、独自に発展したのが、この
“ザンジバルドア”と呼ばれるものだ。現在では、そうもいかなくなってきてい
るようだが、かつてザンジバルの人々は、家を建てる時はドアからつくり始めた
というほど、このドアは人々にとって大きな意味を持っている。ドアの大きさや
ドアに描かれる模様の繊細さは、その家に住む人の地位や権力を示すものなのだ。
また、ドアに描かれた模様には、ひとつひとつ意味がある。たとえば、魚のモチー
フは子宝に恵まれるようにとの祈願の意味、チェーンの模様は家の安全祈願の意
味、花や果物のモチーフは商売繁盛の祈願であり、商売人の家のドアになる。S
字の模様は、お香の煙を表し、それは富の象徴である。また、ライオンの模様を
描けるのは昔から王様だけなのだそうだ。
ストーンタウンで今でも見られる古いザンジバルドアたちは、どれもそんな奥深
さを見るからに感じさせる重圧感を漂わせている。
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ストーンタウンで、歴史のある古いドアをひとつひとつ眺めるのはそれだけで楽
しいのだけれど、それがすきな人にとっては、今もこうして昔ながらのザンジバ
ルドアをつくっている職人さんたちの仕事風景を見ながら、つくられているドア
の行き先や未来を想像したり、ストーンタウンの古いドアがつくられた時のこと
を想像したりするのはとても楽しいと思う。
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(2004年12月)
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