夜の8時過ぎになると、門番のジェームスが、『タヤリー(来たぞー)』と大声で呼んでくれる。ベランダから下を見ると、ジェームスとコーヒー売りのサディキが、こっちを見て手を振ってくれる。下に降りて、コーヒーと、ピーナッツの砂糖菓子のカシャタを手に、近所の人たちとの井戸端会議がはじまる。こういう場のことをスワヒリ語でキジウェニという。いつからか、こうしてこのキジウェニで、いつものメンバーとたわいのない話をしたり、歌ったりしながらコーヒーを飲むのが私の日課になっている。とても楽しいひと時だ。
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コーヒー売りのサディキは、片方の手に、炭火を乗せたアルミのお皿の上にコーヒーの入ったやかんを持って、もう片方の手には小さなコップが入ったバケツとコーヒーのおつまみのカシャタを持ってくる。小さなカップのコーヒーが、一杯10シリング。カシャタも1コ10シリング。これがどちらもとってもおいしい。サディキは、歩いて1時間ほどのところにある家から、お昼から1周、夕方からもう1周、こうしてコーヒーとカシャタを持って毎日巡回しているのだそうだ。
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なぜだかコーヒー売りには、タンガニーカ湖畔の町キゴマ出身の人が多いのだが、サディキもキゴマのはずれにあるマヘンベという村の出身だ。家族はキゴマにおいて単身でダルエスサラームに出稼ぎに来ていて、ここでは、同じ村から同じようにコーヒー売りをしている若者たちと家を借りて暮らしている。地方からダルエスサラームに出てくる人たちは、たいてい同郷の人と身を寄せ合って暮らすのがタンザニア流で、日本とは大きく違うなと感じることのひとつだ。サディキがラマダン明けにキゴマに帰省した時には、彼と一緒に住んでいる同じ村出身のジョージが、私たちのキジウェニに来てくれていた。実は、サディキも、いちばんはじめに来ていたノヴァが結婚するためにキゴマに帰ることになった時に連れてこられた2代目だ。
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