JATAツアーズのオフィスの近くにあって、ずっと気になりながら、いつも通り過
ぎてしまっていたのだけど、一度入ってからすっかり気に入って、週に何度とな
くというほど足を運ぶようになったのが、このmawazoギャラリーである。YMCAの
敷地内の小さな建物の2階にあるこのギャラリーは、ペインティングやオブジェ
クトが並ぶ2つのメインショールームと、アクセサリーやポストカード、革製品
などの小物が並べられたもう1つの部屋からなる。大きな窓のある真っ白な壁が、
いわゆるアフリカンアートによくあるカラフルなペインティングと真っ黒の彫刻
を平等にひき立てているかんじがする。3年間、誰にも使われることなく放置さ
れていたこの場所をオーナーのレイチェル自らペンキを塗り、電気、水道をひい
て今のかたちまでつくりあげ、きょ年の初めにオープンさせたのだそうだ。
レイチェルは、大きな笑顔がとっても魅力的な女性である。彼女の気さくでフレ
ンドリーな雰囲気が、特に用事はなくてもちょっと足を運びたくさせる。
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タンザニア人のお父さんとイギリス人のお母さんの間に生まれた彼女は、2年前
にタンザニアに来るまでは、スイスに暮らしていたそうだ。アート好きの両親の
もとで、いつもアートに囲まれて育った。しかし、ここでアートギャラリーを始
めるというのは、前々から考えていたことではなく、タンザニアに住み始めてか
ら思い立ったことなのだという。レイチェルは、mawazoギャラリーを始めた経緯
について次のように話してくれた。
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『タンザニアに住み始めた頃、お父さんの出身地、キリマンジャロのふもとのマ
ラングという村で、ラウィという彫刻家に出会ったの。彼はとっても才能のある
彫刻家で、私たち家族全員彼の彫刻がものすごく気に入った。マラングでひとつ
ひとつ地道に作品を彫っていく彼の姿にとっても好感を持ちながらも、同時に彼
にはもっと彼の作品を芸術として人の前に出せる場所が必要だと思った。だから、
このギャラリーは、初めはラウィの作品のために始めたの。』
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それが、実際にギャラリーを始めてみたら、ここへ来る人たちがいろいろなアー
ティストを紹介してくれて、どんどん世界が広がってきた。そして、こうしてい
ろいろなアーティストたちに出会うたびに、レイチェルはたくさんのアーティス
トたちが、彼らの作品を披露できる場所を必要としているのだと改めて実感して
いるという。ギャラリー内には、ラウィの作品を中心に、7,8人のアーティス
トの作品が展示されている。だいたいの作品はアーティストがここへ持ってくる
ものらしいが、要望があれば、レイチェル自らピックアップを走らせて地方に作
品をとりに行くという。『They need explosion!!』と、レイチェルがくりくり
の大きな目を一段と大きくキラキラさせて言ったのがとても印象に残っている。
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スワヒリ語でmawazoとは、『thought』という意味合い。アートは、いろいろな
mawazoから生まれる。そして、それを見る人にmawazoを与える。そして、このギャ
ラリーが、訪れる人たちそれぞれのmawazoを交換し合える場所であれるように、
というレイチェルの思いからつけられた名前である。
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メインルームには、テーブルが5組ほど置かれていて、飲み物やレイチェル手作
りのケーキなどが注文できる。これも、訪れる人たちがここでゆっくりとmawazo
するのにとてもうれしい。
現在、もう7月まで毎月展示の予定が入っている。今後は、このアートな空間に
音楽も取り込んでいきたいのだという。何かまたおもしろいことが始まりそうだ。
これからも、タンザニアのアーティストたちが彼らのmawazoを思う存分表現できる
場所として、そして訪れる人たちみんながmawazoする場所として、活躍していって
ほしいなと思う。
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(2004年2月)
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