ザンジバルのマクンドゥチという村に、この村の名物ともいえるMwaka Kogwa というお祭りがあります。バナナの茎でなぐりあうという、奇怪なお祭りです。
お祭りの日は、ペルシア暦の新年にあたる日で、その日は、ザンジバルの他の地域ではふつうどおりなのですが、マクンドゥチだけ学校も仕事もお休みになります。
お祭りの前日は、村の男性たちは、集落ごとにお金を出し合い、牛を何頭も絞め、女性たちは爪や手足にヒナやピコーとよばれる装飾をして、祭りの準備をします。会場付近には、屋台やディスコが設営され、ストーンタウンから里帰りする人々でにぎやかになります。
お祭り当日の早朝、今年のこの祭りを取り仕切る村の長老3人と祈祷師が、“このお祭りが平和で無事に行われますように”と祈願するために集まります。
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コーランを読み終わった後、祈祷師が立ち上がり、草むらのほうにひとりで出て行きました。手にはニワトリを持って。これをいけにえにするのです。いけにえにする前に、東西南北順番に、このお祭りの成功を祈願します。そして、長老の一人がニワトリの首を切り落とし、それを地面に放り投げると、頭のない体だけになったニワトリが、ものすごい勢いで、バタバタと地面を駆け回るのです。こうして、大地にこのニワトリの血を捧げるのだそうです。
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お昼前になり、いよいよお祭りのメインイベントの始まりです。参加者たちが、軍隊のように列をなして広場に走り入り、みるみるうちに会場中を赤い土煙と熱気でいっぱいにしていきます。みんなバナナの茎を両手と、さらに予備を腰にさしています。ものすごい厚着の人、変装している人、女装している人などもいます。子ども同士で闘っている姿もみられます。
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なぐり合いは、まったく容赦なく、みんな本気です。以前は茎ではなく、もっとかたい枝で闘っていたらしいのですが、あまりに危険なので、政府が枝を禁止し、茎が使われるようになったのだそうです。でも、“茎ならなんでもいいだろう”という発想から、茎を乾かしたものを編んで縄にしている人なんかもいます。ところどころにほら貝をフォーッ、フォーッと吹く人がいて、この音が参加者をさらにあおります。
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バナナの茎で闘うのはほぼ男性だけですが、お祭りを盛り上げるのは、男性だけではありません。色とりどりのカンガで着飾った女性たちが、闘う男性たちの周りで踊りながら歌います。
その歌のことばは、男性をもっと熱くさせるような挑発的なものばかりなのだそうです。
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最後に会場のまん中にキバンダ(小屋)を立て、それを燃やし、これがお祭りのシメとなります。このキバンダに火をつけることによって、悪い精霊が森へ追い払うという意味があるそうです。
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そして、このキバンダの火が終わると、みんないっせいに帰り路につきます。あんなに熱気でむんむんとしていたのに、この火が消えるとみんなそそくさとこの広場をあとにします。その名残惜しさや余韻というもののなさには驚きますが、そういうところがまた好きだなぁと思ってしまいます。
でも、会場を去った後も家でごちそうを食べたり、ディスコやビーチに行ったりとみんな思い思いにお祭りの日を過ごすようです。
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(2004年9月)
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