ダルエスサラーム便り


Habari za Dar es Salaamタンザニアからの手紙タンザニアの片隅で

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Harufu ya Karafuu

森田(もりた) さやか森田さやか

第4回 一粒のピーナッツ


 

私達がいつもピーナッツを買うマチンガのおじさん
ダルエスサラームの街中を歩いていると“ジャラジャラ ジャラジャラ”と、たくさんの硬貨が重なり合う音がどこからともなく聞こえてくる。私はなぜかこのジャラジャラの音が好きで、この音が聞こえてくると聞き入ってしまうし、硬貨を鳴らして歩いている人を見ると見入ってしまう。硬貨を鳴らして歩いている人、というのは歩きながら商売をしている人。道を歩きながら新聞や雑誌を売ったり、タバコを売ったり、ピーナッツを売ったりしている。

 ダルエスサラームには、皆が皆ジャラジャラ音を鳴らしているわけではないけれども路上で物を売っている人がたくさんいる。そういう路上で物を売って商売をしている人たちをマチンガと呼ぶ。マチンガにはバナナやパイナップル、スイカやオレンジなどの果物を売っている人もいれば、靴、洋服、靴下などの衣料品を売っている人もいる。タンザニアではタバコが1本単位でも売られているので、マチンガから1本だけ買ってその場で火をつけ歩きタバコをする人もいる。どうしてだかずっと不思議に思っていたけど、タバコとピーナッツという組み合わせで売っているマチンガが多い。タバコ、またはピーナッツだけでは儲からないのかな?

 キクウェテ氏が大統領になってから政府の規制でマチンガの数は大幅に減ったが、今でもたまに警察に捕まりつつ賄賂を払いつつ続けている人たちがたくさんいる。私はマチンガシステムはかなり便利だと思う。なぜってお店が歩いて自分の近くまでくるのだから。マチンガはだいたい毎日同じルートを歩いている人がほとんどなので、あるものを買いたいと思えば決まった時間に決まった場所に行けば買えてしまう。自分の近所でめぼしいマチンガを探しておくと便利。

 私はオフィスの近くを通るマチンガからピーナッツをよく買って食べている。友人たちとみんなで分け合って食べる。私がマチンガというものに慣れていなかった頃から友人たちが買って分けてくれていた。誰かが買ってそれをみんなで分けて食べる。そんな習慣がタンザニアにはある。たまたまその場にいた知らない人にも「カリブ(どうぞ)」と言って分けて一緒に食べる。


このような籠を片手に、もう片方の手には硬貨を
何枚も持ってジャラジャラを音を立てている
 タンザニアの人たちはものに対する執着心が非常に弱いのではないかと思うことがある。自分の所有物をすぐ人に貸すし、もしその貸した物を失くされたり壊されたりしても“しょうがないや。運が悪かったね”で済ませてしまうことが多い。例えば体の不自由な人が道でお金をすがってきたとする。
私はそのような状況に慣れていないこともあり、どうしたらいいのかわからず戸惑ってしまうのだが、タンザニア人はポッとお金を少し渡したりする。お金持ちそうな人だけではない。いつもお金がないお金がないと冗談を言っているような若者も渡すことがある。
    体が不自由で働けず稼ぎがない人達だけではない。タンザニアでは友達ならまだいいものの、ちょっとした知り合いや知らない人にでも普通に「ジュース買って」や「水買って」と言ったり言われたりする。それをみんな当たり前のように受け入れている。私はその感覚が不思議で仕方がない。どうしてなの?と聞いてみると、“タンザニアではみんな助け合って生きてるんだ。自分の懐に少しでも余裕があったら必要としている人に渡すのは普通だよ”とみんな言う。ずっと昔から今までそうやって生きてきたのかな、自分の両親やおじいちゃんおばあちゃんもそんな風にやっていたから大人や若者もそんな感覚なのかな、と思う。普段ちらちらっと話すだけの警備のおじちゃんに「明日休みだからちょっとお金おくれよ」と言われて、そこでポッと渡せてしまうその感覚が本当に不思議だ。本当に不思議な寛大さ。


この筒の中にピーナッツを詰めてくれる。
一筒100シリング
 ある日、いつものようにみんなでピーナッツを分けて食べながら談笑していた時、私の手のひらからコロッとピーナッツが一粒地面に落ちてしまった。ふーふーしたら食べれるわと思いそれを拾おうとした瞬間、周りにいたみーんなに止めたれた…。「汚い汚い!食べたらあかん!」と…。あ、やっぱり駄目なのねと思いつつ残りのピーナッツを一粒ずつ食べていたら、目の前に新しい筒(写真参照)がひとつ。「えっ!なんで?」と思って周りを見るとみんななにやらニヤニヤしている。「そんなにお腹空いてるならもう一筒食べな」とまたまた買ってもらってしまった。こんな私って一体……と思いつつも、みんなの優しさが嬉しくこちらもつい笑ってしまう。そしてまたそのピーナッツを分け、みんなで仲良く食べるのだ。

                          (2007年12月15日)


  ☆Harufu ya Karafuu(クローブの香り)は、とてもいい香りで多くのタンザニア人は好きだとか…。
森田さやかがタンザニアの良い部分、ステキな部分を書いていきます。


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